業務マニュアルと業務基準書は、どちらも業務を円滑に遂行するために使用される文書で、ほとんど両者の違いを意識せずに使われることが多いと思います。しかし今回はあえてこのふたつを明確に区別してみたいと思います。
業務マニュアルと業務基準書、もっとも明らかな違いは何でしょう。それは、
「業務マニュアルはHow、業務基準書はWhyを書くもの」
ということです。順に説明していきましょう。
業務マニュアルは、業務の手順や方法を具体的に示した文書です。従業員が業務を効率的かつ統一的に遂行できるようにすることを目的としています。例えばアルバイトの従業員に配布するマニュアルを想像してください。どのスタッフがどの仕事を任されてもこなせるように、手順がわかりやすく、具体的に記載されているはずです。業務マニュアルを読めば、誰がやっても同じ品質で業務が遂行できます。ここでは作業手順書も同じ意味で考えてください。
業務マニュアルの種類には次のようなものがあります。
業務マニュアルは一度作成したら、業務の内容や状況が変わらない限りほとんど変更することはありません。
業務マニュアルでは、スタッフが頻繁に入れ替わることを想定して、誰が読んでも理解できるように、手順を具体的に記載します。例えば、「注文情報を確認する」のではなく、「注文情報を確認するために、受発注システムにログインし、注文IDを検索して、表示される情報を確認する」といった具合に具体的に書きます。「なぜ」そうするのかという説明を書くことはあまりありません。なぜならそうすることが既に決まっているからです。それよりも、間違いなく業務を遂行するために、「何をどのように」行うかを重点的に記載する必要があります。
図や画像、動画を活用する
複雑な手順やシステム操作が含まれる場合、動画やスクリーンショット、写真を使用して視覚的に分かりやすく説明します。
チェックリスト形式にする
特に重要な手順や確認項目はチェックリスト形式にすることで、漏れを防ぎます。
チェックリストのあるマニュアルの作成方法はこちらをご覧ください。
これに対して、業務基準書とは、書かれてあるとおりにやれば100%画一的に実行できるというものではありません。むしろそういう業務のほうが珍しいのではないでしょうか。通常の業務では状況は日々変わっていきますし、イレギュラーな対応が発生することも度々あります。そういった厳密にはマニュアルにすることができない業務を標準化するためにあるのが、業務基準書です。業務基準書には、100%同じにはできないかもしれないけど、その基準を遵守していれば、みんなが80%の成果を出すことは期待できるというような、ノウハウやルールを記述します。
業務基準書の種類には次のようなものがあります
このように、業務基準書はどのように業務を遂行するか、よりも、いかに業務の品質やパフォーマンスを挙げられるかにフォーカスされる点が、一般的な業務マニュアルと異なります。
業務基準書は業務の質を向上させるために先人たちが培った、いわばノウハウのかたまりです。ですがそこに「なぜ」そうするのかが書かれていないと、読む人によっては、マニュアルどおりに実行することが目的になってしまいかねません。定型業務であればそれでいいのですが、ここで遂行したい業務はそういうものではないでしょう。そのために、「Why(なぜそうするか)」を明確に記述することは重要です。このマニュアルがこういうことも目的として書かれてあるのであれば、こういうケースではこのように応用すればいいはずだ、であるとか、こういう観点であれば改善すべきところもありそうだ、というように、マニュアルを使う現場が腹落ちすることで、初めて活用できる業務基準書になります。
この画像は無印良品で作られているマニュアルの例ですが、陳列ひとつとっても、(何)を(なぜ)(いつ)(誰が)やるのかが明記されていることがわかります。
明確で測定可能な基準を設ける
基準を具体的に設定し、数値や具体的な条件を記載します。例えば、基準は「清潔であること」ではなく、「清潔とはどういう状態か」といった具体的な定義を行います。無印良品の例では、色の並びやサイズの並びが明確に決められています。
定期的にレビューと更新を行う
業務基準書で扱う業務はその時々で状況や最適なやり方は変わってきますので、定型的なマニュアルと違い、常に更新して最新の状態を保つ必要があります。定期的にレビューし、現場主導で必要に応じて更新するしくみを作ります。
業務マニュアルと業務基準書を効果的に活用することで、業務の効率化と品質の向上を図ることができます。実際にはこれらが明確に区別されることは多くはなく、両方が同じ文書の中で混在している場合もあるでしょう。ですがこの違いを意識していただくことで、自分たちが本当に必要としているのはどういうマニュアルなのか、考えるきっかけになるのではないでしょうか。